歯髄再生治療とは
歯髄再生治療とは?
失活歯から生活歯へ歯髄再生の技術
歯髄再生治療は、乳歯や親知らずなど、治療で抜く歯から採取・培養した「歯髄幹細胞」を根管内に移植することで、失われた歯の神経組織を再生させる治療法であり、2020年に実用化された第二種再生医療です。患者様にとっての「新たな希望」、患者様の生活・将来を考え、最適な治療を提案したい先生にとっての「新たな選択肢」となります。
歯髄幹細胞とは?
人体は約60兆個の細胞から構成されていますが、その中には、自らと同じ能力を持つ細胞に分裂できる能力と、様々な組織に分化する能力を持つ細胞が存在します。この細胞を「幹細胞」といい、近年幹細胞を用いて身体の組織を再生させる「再生医療」が世に広まりつつあります。
幹細胞は歯や脂肪、骨髄等から採取可能ですが、「歯髄幹細胞」は抜ける歯から採取できるため、採取時の身体への負担が小さいという利点があります。また、固い歯に守られて外部からのダメージが少なく、形質が安定していることから、再生医療に適した幹細胞といわれています。特に、神経組織・血管組織の再生や象牙質組織の再生には優れた特性を示します。
歯髄の機能と必要性
- 修復・反応象牙質形成能を持ち、
神経組織を保護する - 免疫調整能を持ち、根管内の
感染防御力を高める - う蝕による警告信号を伝え、
う蝕の進行を防ぐ - 歯に水分や栄養分を供給し、
歯の強度を保つ
歯髄を失った歯はこれらの機能が失われて脆くなり、
修復治療を繰り返すことで歯根破折や抜歯のリスクが高まります。
歯髄再生治療の流れ
1. 不用歯の抜歯
噛み合わせに関係ない親知らず、矯正治療のために抜く予定の歯、生え変わる前の乳歯などの不用歯(噛み合わせに不用な歯)を抜歯します。
2. 歯髄幹細胞の採取・培養
抜歯した不用歯から、歯髄幹細胞を採取し、約1ヵ月かけて培養して細胞を増やします。品質検査後、治療で用いるまで安全に保管されます。
3. 根管内の除菌
治療の対象となる歯の根管内を除菌し,無菌化を図ります。
4. 歯髄幹細胞の移植
治療の対象となる歯の根管内に、不用歯から採取・培養した歯髄幹細胞と遊走因子G-CSFを移植します。その後、象牙質誘導物質とMTAセメントを用いて処置を行います。
5. 血管新生因子・神経栄養因子を放出、従来の幹細胞が根管内へ遊走
移植した細胞が根管内に留まり、血管新生因子、神経栄養因子を放出します。これらの因子とG-CSFの相加作用により、歯の周囲組織から在来幹細胞が根管内へと遊走(移動)します。
6. 血管新生・神経伸長・歯髄再生
根管内に入ってきた細胞が歯髄固有の細胞に分化し、血管や神経などの歯髄組織が再生されます。
7. 被蓋象牙質形成
再生歯髄面上に骨様象牙質が形成され、その下にさらに象牙芽細胞が並び、根管内部方向へ細管象牙質が形成されます。
導入の流れ
技術講習会/実技・筆記試験
(有料)
認定取得
歯髄再生治療ライセンス契約(有料)
一社)歯科再生医療協会サポート提供契約(有料オプション)
特定認定再生医療等委員会申請(外部審査 申請料)
承認
厚生労働省(地方厚生局)への再生医療等提供計画の提出
- (参考)厚生労働省
受理
歯髄再生治療開始
(細胞調製、細胞移植用機器・設備のご用意が必要となります。)
当協会では、各施設の歯髄再生治療開始をサポートしております。
注意事項
歯髄再生治療は『再生医療等の安全性の確保に関する法律』に基づき実施する、第二種再生医療に該当する治療です。
治療開始にあたり、以下の注意点がございます。
- 1.歯科医院にて細胞の取り扱いがあるため、必要な衛生管理が求められます。
- 2.細胞取り扱いのため、機器の追加購入が必要になります。(クリーンベンチ、マイクロピペット、遠心機など)
当協会よりご案内いたします。 - 3.根管内および歯髄の状況を正確に判断するために、マイクロスコープやCBCT(歯科用CT/X線撮影装置)が必要となります。